通勤時間に読むミステリーは、何を見て選べばいいか
朝の電車で長編の続きを開いたら、登場人物の名前を思い出しているうちに降りる駅に着いてしまった。 片道20分や30分ずつ読み進めていると、こういうことがよく起きます。 ミステリーは、前に出た手がかりや人物の関係を覚えておくほど面白くなる読み物です。 細切れの時間で読むのは、実は相性があまりよくありません。
それでも通勤時間に読みたいなら、選ぶ段階で外れを減らせます。 当サイトは作品ごとに「形式」「難易度」「単独で読めるか」を判定しているので、その集計を手がかりに、見るべき点を3つにまとめました。
一話で区切れるか
いちばん効くのは、本の形式です。 一話ごとに事件が片付く本なら、乗っている間に一話を読み、次の日は次の話から始められます。 前の日の内容を覚えていなくても、困ることがほとんどありません。
当サイトで判定した232冊のうち、短編集が18冊、連作が48冊、アンソロジー(複数の作家の短編を集めた本)が3冊ありました。 合わせて69冊、およそ3冊に1冊です。
ただし、短編集と連作は少し性格が違います。 短編集は、話同士が独立しているものが中心です。 連作は、同じ人物や同じ場所でつながった短編の集まりです。 連作では、後の話が前の話の出来事を受けて進むことがあります。 目次の順に読むほうが安全です。
たとえば『一番線に謎が到着します』は連作です。 版元の幻冬舎の紹介によると、舞台は郊外を走る蛍川鉄道の藤乃沢駅。 若い鉄道員の夏目壮太が、忘れ物や幽霊の噂といった駅のトラブルに向き合います。 電車に乗りながら駅の話を読むのも、通勤ならではの選び方かもしれません。
一番線に謎が到着します
第三の時効
名探偵傑作短篇集 火村英生篇『第三の時効』は、集英社の紹介では全六篇の連作短篇集で、舞台はF県警の強行犯係。 『名探偵傑作短篇集 火村英生篇』は、目次を見ると6編を収めた選集です。 どちらも一編ずつ区切って読めます。
人物が少なく、時系列が素直か
二つ目は、当サイトの「難易度」です。 難易度は3段階で、いちばん易しい「入門」を次のように定めています。
ひとつ上の「中級」は、人物が多いか構成に仕掛けがあり、まとまった時間で読むほうがつかみやすい本です。 通勤時間に向くのは、はっきり「入門」の側です。
集計すると、形式と難易度には分かりやすい関係がありました。 短編集・連作・アンソロジーの69冊では、54冊が「入門」です。 長編の163冊では、「入門」は52冊にとどまります。 主要な登場人物の数も、短い話の集まりのほうが少なめでした。 短編は一話の中で人物を出し入れするので、覚えておく名前が自然と少なくなるのだと考えています。
長編でも「入門」の本はあります。 その場合は、時系列がまっすぐ進むかも見ておくと安心です。 過去と現在を行き来する構成は、間を空けて読むとどちらの時間の話か分からなくなりがちです。
単独で読めるか、読んだ後どんな気分か
三つ目は「単独で読めるか」です。 シリーズの途中の巻は、前の巻で決まった人間関係を前提に話が進みます。 細切れに読むうえに前提まで欠けると、追うのがさらに大変になります。
短い話の集まり69冊のうち、当サイトで「単独で完結」としたのは53冊でした。 残りは「前提あり」です。 『育休刑事』や『箱庭図書館』は「単独で完結」にしています。 『箱庭図書館』は、集英社の紹介文に「6つの物語」とある一冊です。
もう一つ、通勤ならではの観点として、読後感も見ておくといいと思います。 朝、職場に着く直前に後味の悪い話を読み終えると、その気分のまま一日が始まります。 当サイトでは読後感を「爽快」「ほろ苦い」「不穏」などに分けています。 行きの電車には軽いもの、帰りには少し重いもの、と分けて選ぶ方法もあります。 読後感の使い方は「重い話を読みたくないとき、何を見て選べばいいか」で詳しく書きました。

『名探偵の掟』は連作で「単独で完結」、読後感は「爽快」としました。 ただ、難易度は「中級」です。 密室や見立て殺人といったミステリーのお約束を材料にした話なので、定番をいくつか知っているほうが楽しめます。 形式が短くても、難易度は別に確かめる必要がある例です。
まとめ
- 一話で区切れる本を選ぶ。短編集・連作・アンソロジーは当サイトの232冊中69冊
- 連作は話がつながることがあるので、目次の順に読む
- 難易度は「入門」を選ぶ。短い話の集まりでは69冊中54冊が「入門」
- シリーズの途中の巻は避け、「単独で完結」の本から入る
- 朝に読み終える本は、読後感が軽いものにしておく
最初の1冊を選ぶ観点は「ミステリー初心者が最初の1冊を選ぶときに見る3つのこと」にもまとめています。 一話完結で後味の軽い本を探すなら、日常の謎 の一覧から見ていくのが近道です。
出典
- 『一番線に謎が到着します 若き鉄道員・夏目壮太の日常』の発売日(2015年5月14日)、文庫であること、紹介文(蛍川鉄道・藤乃沢駅、若い鉄道員の夏目壮太、忘れ物や幽霊の噂):https://www.gentosha.co.jp/book/detail/9784344423435/
- 『第三の時効』が集英社文庫で、紹介文に「全六篇の連作短篇集」とあり、舞台がF県警の強行犯係であること:https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-746019-3
- 『箱庭図書館』の紹介文に「6つの物語」とあること:https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-745131-3
- 『名探偵傑作短篇集 火村英生篇』の収録作が6編(目次)であること、刊行年月(2017年8月):https://api.openbd.jp/v1/get?isbn=9784062937382
- 当サイトの作品ページで『一番線に謎が到着します』を難易度「入門」・形式「連作」・「単独で完結」としていること:https://yomistery.com/books/ninomiya-atsuto/b423435/
- 当サイトの作品ページで『名探偵傑作短篇集 火村英生篇』を難易度「入門」・「単独で完結」としていること:https://yomistery.com/books/arisugawa-alice/b937382/
- 当サイトの作品ページで『名探偵の掟』を形式「連作」・「単独で完結」・読後感「爽快」・難易度「中級」としていること:https://yomistery.com/books/higashino-keigo/b646185/
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