シリーズものは途中の巻から読んでも大丈夫か。見分け方と3つの段階
古本屋や図書館で、気になる本を見つけたとします。 手に取ってみると、帯や紹介文に「シリーズ第4作」とあります。 1作目は棚に見当たりません。 このまま借りてもいいのか、1作目を探してからにすべきか。 シリーズものは、途中の巻から入れるかどうかで迷う場面がとても多いジャンルです。
答えは「本による」なのですが、それでは何も言っていないのと同じです。 当サイトでは作品ページごとに「読む順」という項目を設け、3段階で判定しています。 この記事では、その3段階が何を意味するのかと、作品ページがない本を書店で見分けるときの手がかりを書きます。
当サイトの3段階
作品ページの「読む順」は、次の3つのどれかです。
| 表示 | 意味 | 途中から入ると |
|---|---|---|
| 単独で完結 | この1冊で話が閉じている。前に読むべき本はない | 問題なし |
| 前提あり | 事件はこの巻で片付くが、人物の関係や経歴は前の巻を受けている | 楽しめるが、少し損をする |
| 前作必須 | 前の巻の出来事や結末を知っている前提で書かれている | 前の巻から読むことを勧める |
この記事を書いた時点で、作品ページは232冊あります。 内訳は「単独で完結」が161冊、「前提あり」が56冊、「前作必須」が15冊です。 シリーズものが多いわりに、「前作必須」は少ないと感じるかもしれません。 それは、ミステリーのシリーズの多くが1冊ごとに事件を解決する作りになっているからです。
ただし「事件が片付く」ことと「その巻だけで全部わかる」ことは同じではありません。 その差を表しているのが、真ん中の「前提あり」です。
「前提あり」は、人物の積み重ねがある本
「前提あり」の典型は、同じ主人公が巻ごとに別の事件に挑むシリーズです。
たとえば『浜村渚の計算ノート』は「単独で完結」、続く『2さつめ』は「前提あり」にしています。 「前提あり」は、その巻の事件はその巻の中で追えるものの、人物の紹介や舞台の説明は前の巻で済んでいる、という意味で付けています。 2巻目から入っても話はわかります。 ただ、1巻目で人物や設定に初めて出会う楽しみは、先に通り過ぎてしまいます。
浜村渚の計算ノート
浜村渚の計算ノート 2さつめ ふしぎの国の期末テスト
マスカレード・ナイト『マスカレード・ナイト』も同じ扱いです。 シリーズの読む順番は「マスカレード・シリーズはどの順番で読むか」で詳しく書きました。 タイトルに「2さつめ」のような番号が入っている本は、少なくともこの段階だと考えておけば外しにくいはずです。
「前提あり」の本を途中から選ぶのは、悪い選択ではありません。 気に入ったら前の巻へさかのぼればいいのですから。 ただ、人物の関係がどう変わっていくかを楽しみたい人は、1作目から入ったほうが得をします。
「前作必須」は、話が前の巻から続いている本
「前作必須」の15冊は、大きく2つに分かれます。
1つは、上下巻や全4巻の後半の巻です。 『時計館の殺人』の下巻や『空の境界』の中巻・下巻がこれにあたります。 当サイトは巻ごとに作品ページを作っているため、後半の巻はどうしても「前作必須」になります。 15冊のうち10冊がこの形でした。
もう1つが、シリーズの途中の巻で、前の巻の出来事がそのまま話の土台になっている本です。 残りの5冊がこちらで、迷うべきなのはこちらのほうです。
逢坂剛の『よみがえる百舌』は、その分かりやすい例です。 版元の集英社の紹介文は、現場の様子を描いたあと「あの暗殺者・百舌が帰還したのか?」と続きます。 「あの」と書かれている時点で、読者が百舌を知っていることが前提です。 電子書籍ストアの百舌シリーズ一覧を見ると、この本は『百舌の叫ぶ夜』から『百舌落とし』まで続くシリーズの途中に置かれています。 同じ一覧にある『のすりの巣』も、当サイトでは「前作必須」です。
よみがえる百舌
のすりの巣
インタビュー・イン・セル『インタビュー・イン・セル』のように、版元は「単独でも読める」としながら、当サイトはもう一段厳しく見ている本もあります。 読めることと、損をしないことは別です。 前の巻の結末を先に知ってしまうと、そちらを後から楽しむ機会がなくなります。 当サイトの「前作必須」は、その損を避けたい人に向けた判定です。
作品ページがない本を見分ける手がかり
当サイトに載っていない本を書店や図書館で手に取ったときは、次の順に確かめると迷いにくくなります。
- 書名に番号や巻数があるか。 「2さつめ」「9」などの番号は、少なくとも「前提あり」と考える
- 紹介文に「シリーズ第◯弾」「続編」「待望の」とあるか。 続編と書かれていれば、前作の結末に触れる可能性がある
- 紹介文が人物を説明しているか。 「あの」「再び」「帰ってきた」のように、読者が知っている前提の書き方なら注意する
- 上下巻・分冊か。 下巻や中巻は、まず上巻から
紹介文の書き方は、案外正直です。 初めての読者を想定した本は、主人公が誰で、どんな仕事をしているかから説明します。 前の巻を読んだ人を想定した本は、そこを省いて「あの」から始めます。 帯や裏表紙を数行読むだけで、ある程度は見当がつきます。
それでも迷ったら、作者の名前で当サイトを探してみてください。 著者の一覧から作者のページを開くと、作品ページがある本の「読む順」がまとめて見られます。
まとめ
- 当サイトの「読む順」は、単独で完結/前提あり/前作必須の3段階
- 232冊のうち161冊は「単独で完結」。ミステリーのシリーズは1冊ごとに事件が片付くものが多い
- 「前提あり」は人物の積み重ねがある本。途中から入っても楽しめるが、1作目から入ると得をする
- 「前作必須」は上下巻の後半か、前の巻の出来事が土台になっている本
- 作品ページがない本は、書名の番号、紹介文の「続編」「あの」、上下巻かどうかで見当をつける
番号の振られたシリーズの例としては、加賀恭一郎シリーズはどの順番で読むか も参考になります。 刑事が主人公のシリーズを探している人は、警察小説 の一覧から「読む順」を見比べてみてください。
出典
- 『よみがえる百舌』の版元紹介文(暗殺者・百舌が「帰還したのか」、「大ヒット・シリーズの最新長編」)と、集英社文庫での発売日(1999年11月19日):https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-747122-9
- 『のすりの巣』の版元紹介文(探偵の大杉と特別監察官の美希が登場すること)と、集英社文庫での発売日(2005年4月21日):https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-747808-2
- 『砕かれた鍵』『よみがえる百舌』『のすりの巣』が、電子書籍ストアの「百舌シリーズ」一覧に『百舌の叫ぶ夜』『百舌落とし』などと並んで載っていること:https://bookwalker.jp/series/14664/list/
- 『インタビュー・イン・セル』が『殺人鬼フジコの衝動』の「待望の続編」と紹介され、「単独でもお読み頂けますが」前2作のあとに読むと「より衝撃度が高まります」と案内されていること:https://booklive.jp/product/index/title_id/337421/vol_no/001
- 当サイトの作品ページで『よみがえる百舌』を「前作必須」としていること:https://yomistery.com/books/osaka-go/b471229/
- 当サイトの作品ページで『浜村渚の計算ノート』を「単独で完結」、『2さつめ』を「前提あり」としていること:https://yomistery.com/books/aoyagi-aito/b771221/
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